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高知地方裁判所 昭和47年(む)345号 決定

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○○○○

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△△△△

右両名に対する公職選挙法違反被疑事件につき被疑者○○○○の弁護人であり被疑者△△△△の弁護人となろうとする弁護士徳弘寿男から、

高知地方検察庁検察官野田一雄がなした接見指定処分について、準抗告の申立があつたので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

高知地方検察庁検察官野田一雄が、昭和四七年一二月一三日付でなした、別紙第一および第二の「接見等に関する指定書」による接見等に関する指定は、いずれもこれを取消す。

理由

一、本件申立の趣旨および理由は別紙第三の「一般的指定書取消申立書」に記載のとおりであるから、これを引用する。

二、(1) 一件記録によれば、被疑者両名は、それぞれ公職選挙法違反被疑事実により昭和四七年一二月一一日逮捕され、次いで同月一三日被疑者○○○○は高知警察署附設の代用監獄に、被疑者△△△△は高知刑務所に勾留されたが、同月一三日高知地方検察庁検察官野田一雄から、別紙第一および第二各記載の接見等に関する指定のなされたことが認められる。

(2) そこで右の各指定の内容を検討すると、これらは被疑者とその弁護人および弁護人となろうとする者(以下単に弁護人等という。)との接見等を検察官が別に発する指定書において指定する日時、場所および時間に限つて許容し、それ以外は接見等を許さないことを指定した趣旨のものと解されるのであり、右のような指定がなされた場合の運用の実際もまた、検察官が被疑者とその弁護人等との接見等に関する日時、場所および時間を具体的に指定しない限り、司法警察職員あるいは監獄官吏は、右の指定を根拠として、被疑者と弁護人等との接見等を一切拒否する取扱いであることが認められるのである。

そうすると、本件各指定は、検察官が個別的、具体的に接見等の指定を行なう場合のほかは一般的に接見等を禁止することを内容および効果とし、その性質上刑事訴訟法第三九条第三項の処分にあたることが明らかであるところ、同項は、その第一項において被疑者と弁護人等との接見交通通の自由を大原則として認めたうえで、捜査のため現実的支障があるときに限り、例外的にその支障のある時間を除いて接見交通可能な日時、場所、時間を具体的に指定することを許容した規定と解されなければならないから、前示のとおり予め一般的に接見等を禁止する本件各指定は、右規定に違反し、その認める検察官の権限を逸脱した違法な処分といわなければならない。

三、よつて、本件準抗告の申立は理由があり、本件各接見等に関する指定は取り消されるべきであるから、刑事訴訟法第四三二条、第四二六条第二項により、主文のとおり決定する。

(安芸保寿 上野利隆 林豊)

別紙第一

接見等に関する指定書

被疑者       ○○○○

捜査のため必要があるので、右の者と弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者との接見又は書類若しくは物の授受に関し、その日、時、場所及び時間を別に発すべき指定書のとおり指定する。

昭和四七年一二月一三日

高知地方検察庁

検察官検事 野田一雄

別紙第二

接見等に関する指定書

被疑者       △△△△

捜査のため必要があるので、右の者と弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者との接見又は書類若しくは物の授受に関し、その日時、場所及び時間を別に発すべき指定書のとおり指定する。

昭和四七年一二月一三日

高知地方検察庁

検察官検事 野田一雄

別紙第三

一般的指定書取消申立書

申立の趣旨

高知地方検察庁検察官検事野田一雄が昭和四七年一二月一一日付でなした別紙記載の接見等に関する指定は、これを取消す。

申立の理由

一、申立人は、弁護士たる資格を保有して、法律事務所を開設しているものである。

二、而して、被疑者○○○○の弁護人であり、同△△△△の弁護人となろうとする者であるところ、昭和四七年一二月一五日前者に接見交通をし、後者には弁護人選任届を受領せんとしたところ、高知地方検察庁検察官検事野田一雄は、同年一二月一一日別紙のような検察官の一般的指定をなしており、これがため弁護人の接見交通権は違法に阻止された。

三、右のような検察官の一般的指定は、被疑者の防禦権を制限し、且つ弁護人の弁護権は重大な影響を受けること明白で、刑事訴訟法第八一条、同第三九条三項の趣旨に徴し違法で許されないことは、既に裁判所において確定した判例ともいえる。

接見等に関する指定書

被疑者       ○○○○

捜査のため必要があるので、右の者と弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者との接見又は書類若しくは物の授受に関し、その日時、場所及び時間を別に発すべき指定書のとおり指定する。

昭和四七年一二月一三日

高知地方検察庁

検察官検事 △△△△

接見等に関する指定書

被疑者

捜査のため必要があるので、右の者と弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者との接見又は書類若しくは物の授受に関し、その日時、場所及び時間を別に発すべき指定書のとおり指定する。

昭和四七年一二月一三日

高知地方検察庁

検察官検事 野田一雄

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